悲鳴を聞き、親の寝室へ駆けつける。
ママ!?血溜りの中に母親の姿が。手にカッター?自殺?
パパを起こさないと。パパ…。動かない?冷たい?
「母ちゃんはまだ生きてる!救急車呼べ!救急車!!」
いつの間にかきていたおとといもに指示する。
「ぼくがころした…」
「そんなこたどうだっていい!早く!」
救急車が到着する頃、やっとねえが寝ぼけ眼で起きてきた。
…………………………
「まことにお気の毒ですが…」
いい。もういい。お医者さん、あんたはよく頑張った。あんたのせいじゃない。助からないことは最初からわかってた。
おと……おとはどこだ………
いた………殺してやる!全部こいつのせいなんだ!!
「おとぉぉぉぉぉ!!!きさまぁぁぁぁ!!!!」
胸倉をつかみ、持ち上げる。妙に軽い。
殴ろうと拳を作る。だけど………
殴る前からおとの顔は傷だらけだった。
なぜ?…いもがつけた傷だ。
いもが死んでいればつかなかった傷………
妹は生き、父は死んだ。弟は、妹を生かすために、父を殺した。
なぜ?こんなに軽い?中学生ならこんなにひょいと持ち上がるものだろうか…………
父さんはいつも俺には優遇した。おともいもも後回しだ。
年下というだけで気の毒なほど待遇が違った。だからか?殺したのは。
なあ、何か言ってくれよ…。握り拳に力が入る。
「ちょっと!病院内で暴れないでください!」
看護婦の声で我に帰る。
………もういい。今はお前の顔も見たくない。
……おとを無造作に投げ捨てた。
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